山鹿簡易裁判所 昭和31年(ハ)64号 判決 1957年8月01日
原告
菊光敏之
被告
富田勝弥
主文
被告は原告に対し金壱万八千八百八拾六円を支払え
原告その余の請求は之を棄却する
訴訟費用は之を五分しその参を被告その弐を原告の負担とする
事実
(省略)
理由
一、被告が昭和三十年九月二十一日原告の頭部及左眼部を殴打して傷害を与えたことは当事者間に争はない而して証人神山正憲の証言及同証言によつて成立を認める甲第一号証証人田代保光の証言及同証言によつて成立を認める甲第二号証に原告本人尋問の結果を綜合すれば右傷害の結果原告は二十二日間仕事ができなかつたことを認定することができ右認定を覆すに足る証拠はない
二、傷害の結果被つた損害について
(1) 休業二十二日の損害
証人菊光チズヨ同木村嘉之の証言同証言によつて成立を認める甲第六号証の二及原告本人尋問の結果を綜合すれば原告は二十二日間の休業によつて積極的に蒙つた損害及得べかりし利益の喪失による損害一日金三百円合計金六千六百円の損害を受けていることを認定することができる右認定を覆すに足る証拠はない
(2) 原告は右休業により原告自身が稲田に出ることができなかつた為米の収穫昭和三十年度は同二十九年度に比較し三俵一斗の減収となり結局金一万三千円の損害を被つた旨主張する証人有働吉介の証言同証言によつて成立を認める甲第五号証原告本人の尋問の結果を綜合すれば原告の米の収穫は昭和二十九年度に比較し同三十年度は一俵三斗の減収となつていることを認定することができるが右減収が本件傷害と相当因果関係にあるとの点は原告提出の全証拠を以てしても之を認定することができない
(3) 証人神山正憲の証言同証言によつて成立を認める甲第一号証証人田代保光の証言同証言によつて成立を認める甲第三号証木庭春生の証言同証言によつて成立を認める第四号証原告本人尋問の結果を綜合すれば原告は本件傷害の為医師の治療代薬品等購入代金として合計金二千二百八十六円の損害を受けたことを認定することができる
(4) 原告が本件傷害によつて被つた肉体的精神的苦痛に対する慰藉料は暴行の態様傷害の部位程度原告の年令職業被告がすでに刑事処分を受けていることその他を考慮し金壱万円を相当とする
従つて被告は原告に対し合計金壱万八千八百八拾六円の支払義務があり原告の請求はその限度において理由があつて爾余の部分は棄却すべきものである仍て訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条第九十二条本文を適用し主文の通り判決する
(裁判官 金子勝蔵)